qSOFAスコアを使いこなす

qSOFAスコアを使いこなす



by ドクターK


さて多くの方がご存知のとおり、2016年に敗血症診断基準が変更となりました。いわゆるSepsis-3(敗血症および敗血症性ショックの国際コンセンサス定義第3版)1であります。この基準では敗血症は「感染に対する制御不能な宿主反応によって引き起こされた生命を脅かしうる臓器障害」と定義されました。従来の基準では敗血症は感染に伴うSIRSとされており、この基準ではただの風邪も時として敗血症となってしまいます。臨床の現場では重症のものを敗血症と呼んでいたために、より現場に即したものとなりました。今回はこの定義の改訂で新たに出現した「クイックSOFAスコア」(qSOFA)2について現在の知見を踏まえてお話しようと思います。

qSOFAは何故良いのか?
 2016年2月に出現したqSOFA(表1)ですが、まだ出現して1年余りにも関わらず、その有効性について多くの研究成果が報告されています。Sepsis-3の敗血症診断ではICUでは通常のSOFA、救急外来や病棟ではqSOFAを使用するように設定されています。その理由ですが、通常のSOFAスコアでは血液ガス検査の結果が必要となりますし、そのスコアを算出するのに時間がかかるため、簡便なqSOFAを用いるほうが現場に合っているという考え方です。さらにqSOFAによる予測死亡率(AUROC = 0.81; 95% CI, 0.80-0.82)はSOFAのそれ(AUROC = 0.79; 95% CI, 0.78-0.80; P < .001)と比べても劣っていません。簡便で正確なら、qSOFAを使いたいと多くの人が考えるのは頷けます。しかしながらSepsis-3でのqSOFA使用の推奨は救急外来と病棟に限定されていました。それではICUでのqSOFAは使用出来るのでしょうか?

ICUでqSOFAは使用可能か?
 ICUの場合は救急外来の使用のように単純ではありません。ICUでの予測死亡率に関してqSOFAの使用はSOFAに比べて劣っている(AUROC= qSOFA: 0.66, SOFA: 0.74)とSepsis-3の発表時に示されていました2。これらのデータは北アメリカとドイツのデータのみでしたので、その後あらたにニュージーランドとオーストラリアでの検証が2017年に発表されました3。このデータでも院内予測死亡率に関してqSOFAはSOFAに比べて劣っていました。つまり現時点では、ICUではSOFAの使用の方が望ましいという一定の見解が得られたように思います。これはSOFAの方が入力すべき項目も多いため、当然と言えば当然の結果であると思います。しかしながらSOFAスコアの点数を覚えている医療従事者はあまりいないため、今後はICUでもより現場で使いやすい修正qSOFAスコアの開発が望まれます。

病院前診療でのqSOFA
 次に病院前診療でのqSOFAの使用を見てみましょう。Dorsettらは2016年8月に病院前診療の場面でのsSOFAの有効性に関して報告しています4。この研究では敗血症と敗血症性ショックの診断にqSOFAの使用を試みましたが、感度はたったの17.4%という結果でした。そのためDosettらは年齢や介護施設に住んでいるなどの項目を追加して修正qSOFAスコア(qSOFA PLUS)も検討しています。しかしながらqSOFA PLUSでも良い結果は得られませんでした。このような結果となった理由ですが、病院前の血圧と呼吸数は救急外来の数値とあまり一致していません。病院前診療では野外や動く救急車内で血圧や呼吸数を評価せざるを得ない場面が多く、これらをきちんと評価することが難しいのです。そのため現時点では病院前診療でqSOFAの使用を支持する結果は得られていませんが、qSOFAの利点である“簡便さ”は病院前診療では強く求められています。今後の研究に期待したいところです。

qSOFAの肺炎への使用
 肺炎の重症度スコアにはA-DROPやCRB-65(表2)が有名でしたが、救急外来でqSOFAの使用が肺炎の重症度スコアとして役に立つという報告が2016年にChenらにより発表されました5。彼らはCRB-65よりもqSOFAのほうが、死亡やICUの入室予測に役立ったと結論付けています。CRB-65は長い間、肺炎の重症度スコアとして使用されてきたので、驚きとインパクトのある結果であると思います。一方で見方を変えますと、肺炎も臓器障害を伴う感染症という意味ではSepsis-3の“敗血症”の診断基準を満たすものが多いと思われます。そういう意味ではqSOFAが救急外来での敗血症の診断基準に使用されるということは、敗血症に含まれる肺炎の重症度予測にも役立つことは理にかなっているのです。

qSOFAの限界と可能性とは?
簡易なスコアで高率に敗血症の死亡率を予測出来るqSOFAスコアですが、限界もあります。つい先日Askimらは救急外来におけるqSOFAによる敗血症の診断の感度はたったの32%であったと報告しています6。また同様にqSOFAを用いた敗血症の死亡率の予測も、SIRSスコアに劣っていました。救急外来と言っても日本の救命センターのような3次救命施設ですと、ほとんどICU入室レベルの患者ばかりであるためICUのqSOFA使用と似たような意味合いとなり、qSOFAよりもSOFAの方が良い可能性があります。つまり一概に救急外来と言っても、施設や国によっても患者層は大きく異なるのです。また国毎で平均血圧値は異なりますが7、qSOFAではこれらは考慮されていません。今後これらがどの地域し施設でも有用かのさらなる検証が必要になると思われます。またあくまでqSOFAの開発目的はSOFAより優れているスコアでなく、SOFAと同等の精度で簡便なスコアを目指しています。重症度予測のみにポイントを絞れば、当然煩雑にするとAUCつまり予測出来る可能性は高くなるわけですが、そうすると臨床の現場では逆に使いにくくなります。そういう意味では、このバランスを良い具合に保っているのが、この“qSOFAスコア”なのです。血圧、呼吸数、意識レベルのみの評価ですので敗血症以外にも使用可能である可能性は十分にあります。

以上、敗血症診断に重要なqSOFAの潮流についてお話しました。
救急は本当に面白い学問です。この面白さが多くの人に伝わればなあ。。




参考文献
1. Singer M, Deutschman CS, Seymour CW, et al. The Third International Consensus Definitions for Sepsis and Septic Shock (Sepsis-3). JAMA. 2016; 315(8): 801-10.
2. Seymour CW, Liu VX, Iwashyna TJ, et al. Assessment of Clinical Criteria for Sepsis: For the Third International Consensus Definitions for Sepsis and Septic Shock (Sepsis-3). JAMA. 2016; 315(8): 762-74.
3. Raith EP, Udy AA, Bailey M, et al. Prognostic Accuracy of the SOFA Score, SIRS Criteria, and qSOFA Score for In-Hospital Mortality Among Adults With Suspected Infection Admitted to the Intensive Care Unit. JAMA. 2017; 317(3): 290-300.
4. Dorsett M, Kroll M, Smith CS, et al. qSOFA has poor sensitivity for prehospital identification of severe sepsis and septic shock. Prehosp Emerg Care. 2017:1–9.
5. Chen YX, Wang JY, Guo SB. Use of CRB-65 and quick Sepsis-related Organ Failure Assessment to predict site of care and mortality in pneumonia patients in the emergency department: a retrospective study. Crit Care. 2016; 20(1): 167.
6. Askim Å, Moser, Gustad LT, et al. Poor performance of quick-SOFA (qSOFA) score in predicting severe sepsis and mortality - a prospective study of patients admitted with infection to the emergency department. Scand J Trauma Resusc Emerg Med. 2017 ;25(1) :56.
7. NCD Risk Factor Collaboration (NCD-RisC). Worldwide trends in blood pressure from 1975 to 2015: a pooled analysis of 1479 population-based measurement studies with 19·1 million participants. Lancet. 2017; 389(10064): 37-55.



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by kaigaiwataihenda | 2018-02-16 15:39 | 救急の知識・最新の知見
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